飛行機と空と雲と風。

空を見上げて一番に目に入るのは白い雲と青い空。そして飛行機の次々と通過する姿はとても頼もしく、何よりも美しいことに気が付いたのは今から2年ほど前のこと。それまでは乗り物として体感する以外には特別な関心は持っていなかったと思う。旅行の為の乗り物という感覚だった。ある時からお腹の白い大きなクジラに気が付いてとてもかわいいものに思えてからが私の興味の始まりだった。古代から自分よりずっと大きなもの、空飛ぶものは神様にすら見えたと思う。きっと私も古代の感覚で見てるんだろーなぁ。

彼女に続いて彼らは甲板に出た。煙も家も全く見えなくなり、早朝の光に青白く照らされとても爽やかで澄んだ広い海に、船は出た。彼らはぬかるみにはまっているロンドンから抜け出した。水平線上には先細ったとても細い線の影が、パリの重荷にほとんど耐えられないほどの太さだけれど、それでも水平線上に留まっている。彼らは道路からも人間からも解放され、自分たちが自由であることに同じ爽快さをみんな感じた。

船は小さな波の中を着実に進んでいた。波は船を叩いた後、泡立つ水のように消えていき、両側に泡と泡の小さな境界線を残した。無色透明な10月の空は、焚火の煙みたいに薄っすらと曇っていて、空気は驚くほど刺激的で爽やかだった。実にじっとしていられないほどの寒さだ。アンブローズ夫人は夫の腕を引き寄せ、二人が歩き出すと、彼女のなだらかな頬が夫に向けられたことから、彼女が何か内緒の話をしたいのだとわかった。

空からのインスピレーション


何気に空を見上げると、飛行中の旅客機の胴体がが不思議なくらいゆっくりと通り過ぎながら、空港へと向かっていく、その途中、草で覆われた夏の小道は濃い緑一色の垂れ下がった葛、桑、燕麦の群生になっていた。大空を見上げる向日葵たちが、長い首をさらに長くして燦燦と降り注ぐ夏の日を暑さに負けじと浴びている。

何年たつのか、これらの植物は上には暗闇が訪れることはなかった。町が同じ場所で永遠に燃え上がるのは恐ろしいことに見えた。少なくとも海へ冒険に出ようとする人々にとっては、町が永遠に焼け、永遠に傷ついた周りを囲む丘に見えることは恐ろしいことだった。船の甲板から見ると、大都会はうずくまって臆病な姿をした、あまり動かない守銭奴のようだった。